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物理/運動の法則の応用

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物理4章 力学(3) 運動の法則の応用

運動の3法則と力の法則を用いると、分子から銀河まであらゆる物体の運動を求めることが出来きます(その正しさは人工衛星や惑星の運動などで確かめられているが、もっとはるかかなたの天体運動にも正しいというのは仮説である)。 運動の3法則からはエネルギー保存則や運動量保存則などの重要な保存則を導く事が出来る(次章で学ぶ)。

目次

[非表示]

質点の色々な運動

最初に質点とみなせる物体のいくつかの運動を考える。

落体運動

地球上の物体は高いところから落とすと、時間とともに速度を増しながら落下する。
質点の質量をMとすると、そこに作用する重力による力は、真下(地球の重心;後で学ぶ)の方向に大きさMg
落下の方向を負にした一次元座標を考え方向まで考慮すると、重力加速度はg、質点Mに作用する力はMg。 落下の加速度をαと置くと、運動の第2法則よりMα=Mg. ゆえに質点の落下加速度αは負の重力加速度gに等しい。 tで微分してgとなる関数はgt+cなので、質点の速度はgt+cである(cは定数で、初期時刻0における質点の初期速度)。微分してgt+cとなる関数を求めれば質点の位置x(t)=12gt2+ct+ddは定数で初期時刻0での質点の高さ)が得られる。
これはガリレオが明らかにした落体法則である。
参考文献;

投射体の運動

質点を地面に対して角度θ(ラジアン)、速さuで投げたときの、質点はどのような運動を行うだろうか。
ガリレオは、慣性法則と落体の法則を組み合わせてりようして、放物線を描いて飛ぶことを発見した。
ニュートン力学を用いれば、運動の第2法則と重力から、以下のように、この運動を導ける。

適切な座標系をいれる

質点が投げ出された場所を原点とし、飛んでいく方向に地面と水平に引いた半直線をx軸の正の側に、地面と直角で上方に向かう半直線をy軸の正の側とする座標を定める。

質点に作用する力を求める

空気抵抗を無視すれば、質点に作用する力は、地球からの重力だけである。この力は、質点の質量をM,重力加速度をgとすると、F=(o,Mg)である。

運動の第2法則から質点の運動方程式をつくる

質点の位置ベクトルをr=(x,y)で表すと
運動方程式は、M(d2/dt2)r(t)=Fである。
座標成分表示すると
M(d2/dt2)x(t)=0, M(d2/dt2)y(t)=Mg

運動の初期状態の指定

投げ上げた瞬間を時刻t=0とおくと、質点の初期位置はr(0)=(0,0), 初期速度はv(0)=(ucosθ,usinθ)

運動方程式を初期状態を使って、解く

(1)x成分の式を解く
M(d2/dt2)x(t)=0は、M(d/dt)vx(t)=0なので(d/dt)vx(t)=0  tで微分して零となるtの関数は定数なのでaと書くと、vx(t)=a
速度の定義より、(d/dt)x(t)=vxなので、(d/dt)x(t)=a. で微分してaとなるのはat+b(bは未知定数)なので、x(t)=at+b
初期条件から、a=vx(0)=ucosθ, またx(0)=a0+b=0なのでb=0
故に、x(t)=(ucosθ)t

(2)y成分の式を解く   
M(d2/dt2)y(t)=Mgは、(d/dt)vy(t)=g tで微分してgとなる関数はgt+c(cは未知定数)なので、
vy(t)=gt+c 故に(d/dt)y(t)=gt+c
tで微分してgt+cとなる関数は、12gt2+ct+dなので、y(t)=12g2t+ct+d   
初期速度の条件から、c=g0+c=vy(0)=usinθ d=12g0+c0+d=y(0)=0   
故に、y(t)=12gt2+(usinθ)t

(3)運動の軌跡(xとyとの関係式)を求める   
x(t)の式からt=x(t)/(ucosθ)
これをy(t)=12gt2+(usinθ)tに代入すると
y(t)=(g/2u2cos2θ)x2(t)+(tanθ)x(t)
これは上に凸な放物線である。
参考文献は

惑星運動

前述のようにケプラーは、火星と太陽の観測データをユークリッド幾何学を巧みに利用して分析し次の惑星運動の3法則を発見した。

惑星運動の3法則を運動の第2法則と万有引力の法則から導く

この3法則は、運動の第2法則と万有引力の法則から導くことが出来るが少し難しい数学が必要である。大学で学ぶ。
惑星の軌道を太陽を中心とする円運動に限定すると、高校の数学の知識で3法則を導ける。
この場合ケプラーの第一法則は、仮定から、明白なので、第二法則から始める。

ケプラーの第2法則の導出 
図 惑星の位置座標


第二法則は、太陽と惑星を結ぶ動径の単位時間に掃く面積が一定であることを主張する。円運動のばあい、これは等速円運動であることと同じである。
そこで等速円運動であることを導こう。
太陽と惑星は質点として扱い、質量をそれぞれM,mとする。

惑星の軌道面をxy平面にし、太陽をその原点にとる。円運動の半径をr, 太陽と時刻tにおける惑星を結ぶ線分が、x軸となす角度をθ=θ(t)とおく。


惑星Pの位置;r(t)=r(cosθ(t),sinθ(t))
惑星の速度;v(t)=dr(t)/dt=r(dcosθ(t)/dt,dsinθ(t)/dt)
=r(sinθ(t)dθ(t)dt,cosθ(t)dθ(t)dt) =rdθ(t)dt(sinθ(t),cosθ(t))

惑星の加速度;α(t)=dv(t)/dt=r(d2θ(t)/dt2)(sinθ(t),cosθ(t))
+r(dθ(t)/dt)(cosθ(t)dθ(t)dt,sinθ(t)dθ(t)dt)
=r(d2θ(t)/dt2)(sinθ(t),cosθ(t))r(dθ(t)dt)2(cosθ(t),sinθ(t))
惑星に働く力;万有引力の法則より、太陽の方向に向いた、大きさGMm/r2の力なので
F(t)=(GMm/r2)(cosθ(t),sinθ(t))
と表せる。
この力が、惑星の運動を変化させ、上述の加速度を生じさせたのだから、運動の第2法則mα(t)=F(t)より、
mr(d2θ(t)/dt2)(sinθ(t),cosθ(t))mr(dθ(t)dt)2(cosθ(t),sinθ(t)
=(GMm/r2)(cosθ(t),sinθ(t))
変形すると、
mr(d2θ(t)/dt2)(sinθ(t),cosθ(t))
=(mr(dθ(t)dt)2GMm/r2)(cosθ(t),sinθ(t)) (1)

(sinθ(t),cosθ(t))(cosθ(t),sinθ(t))は直交するベクトルなので、(1)式が成立する必要十分条件は、
d2θ(t)/dt2=0(2),
mr(dθ(t)dt)2GMm/r2=0(3)
である。
(2)式から、角速度ω(t)=dθ(t)dt=ω0(定数)が
(3)式から、mr(dθ(t)dt)2=GMm/r2
得られる。
これらより、惑星は等角速度
ω0=±GM/r3
で太陽の周りを回転することが分かり、ケプラーの第2法則が得られた。

ケプラーの第3法則の導出 

惑星が太陽の周りを一周する時間T(周期という)は、T=2π/ω0なので、(4)式より、
T=2π/GM/r3=2πr3/GM,
故にT2=4π2r3/GM, T2/r3=4π2/GM
これは軌道が円の場合のケプラーの第3法則である。

ケプラーの法則と運動法則から万有引力の法則を導く 

ケプラーの法則と運動法則から万有引力の法則を導く 

振り子と単振動

質点のつり合い

質点に力F1,,Fnが作用し、質点が静止したまま(あるいは等速直線運動)であるとき、それらの力は釣り合っているという。釣り合いの条件は、F1+ +Fn=0です(運動の第2法則と力の合成則から導出できる)。

仕事とエネルギー

仕事

物体に力を加えて動かす時、力はこの物体に仕事をするという。仕事(の量)は力の大きさと動かした距離の積に比例する。
正確には、加えられる力が一定で、力の向きに対して角度α[rad] だけ傾いている直線上を長さs移動したとき、仕事W は、

W=Fscosα    
特に、この式においてα=0(すなわち cosα=1)とすると「加えられる力が一定であり力の方向が運動の方向と一致している場合」になり、W=Fsである。
また、α=π/2cosα=0)のとき、W=0となる。すなわち、力が運動の方向と直角方向にはたらいている場合、その力は仕事をしない。

仕事の内積を用いた表現

内積は、仕事を記述や計算に便利な数学の概念である。

内積について

ベクトルa,bの内積abは、で定義する。
ここで\|\vec{a}\|は、\vec aの大きさ(長さともいう)\sqrt{\sum_{i}a_i^2}である。

ウィキブックスでは2次元のベクトルを中心にして説明しているが、3次元ベクトルの場合にも、成り立つように修正することは容易である。
例えば、ベクトル\vec a = (a _1,a _2,a_3)の長さは、\|\vec a\|= \sqrt {a _1^2 +a _2^2+a _3^2},ベクトルの内積は、この長さを使えば、全く同じ式で良い。

内積の性質

(1)\vec a \cdot \vec b =\vec b \cdot \vec a
(2)\vec a \cdot \vec b =\sum_{i}a_ib_i
(3)(\vec a +\vec b) \cdot \vec c =\vec a \cdot \vec c+\vec b \cdot \vec c   
(4)(\alpha \vec a)\cdot \vec b =\vec a \cdot (\alpha \vec b)=\alpha (\vec a \cdot \vec b)

仕事の内積表示

内積 \cdot を用いると、物体に力\vec{F}を加えて、\vec{PQ}(P点からQ点まで)動かした時の力のなす仕事は、 W=\vec{F}\cdot\vec{PQ} と表せる。


物体が曲線運動するときの仕事量の求め方

力を受けた時の物体の運動は直線とは限らないが、運動の軌跡を細かく区切って眺めると、線分に近いので、物体の変位は、ごく短い線分をつなぎ合わせたものと考える。すると各線分毎に仕事を計算しそれをたせば、全体の仕事量を求めることができる。

エネルギー

物質の持っている仕事をする能力をエネルギーという。

仕事の単位

仕事の定義から、仕事の単位は、力の単位と長さの単位を掛けたものになる。
MKSA単位系では、力はN(ニュートン)、長さはm(メートル)なので、Nm が仕事の単位であり、J(ジュール)と呼ぶ。

質点系の運動

2個以上の質点が集まって出来ている系を質点系という。
質点系の運動を考えよう。

質点系の運動と重心

質点系とは、いくつかの質点が集まって作っている系のこと。  
系の各質点は離れ離れでも良く、また系の任意の2つの質点間には作用・反作用の法則を満たす力が働いていてもよい。この力を質点系の”内力”という。  
質点系の各質点に外部から力(外力という)が加わる時、この質点系はどんな運動をするだろうか。
質点系の各質点の位置を\vec{r_i}、質量をm_i とし、質点m_i に作用する外力を\vec{f_i}、他の質点m_j からうける内力を\vec{f_{ij}}とする(i,j=1 \ldots N)。
すると、各質点に対して、運動の第2法則により、d (m_i \vec{v_i})/dt=\vec{f_i}+\sum_{j\neq i}\vec{f_{ij}} , \qquad ここで\vec{v_i}=d\vec{r_i}/dt
i=1 \ldots Nについて加え合わせると、\vec{f_{ij}}+\vec{f_{ji}}=0なので、
\frac{d^2}{dt^2} \sum_i{ m_i \vec{r_i}} =\frac{d}{dt} \sum_i{ m_i \vec{v_i}} =\sum_i{\vec{f_i}}
が得られる。質点系の全質量M= \sum_i{m_i} と質点系に働く全外力\vec{F}= \sum_i{\vec{f_i}} を用いて書きなおすと、
M\frac{d^2}{dt^2}(\sum_i{ m_i \vec{r_i}}/M)= \vec{F}
質点系の重心\vec{R}\quad \vec{R}=\sum_i{ m_i \vec{r_i}}/M で定義すると、
M\frac{d^2}{dt^2}R= \vec{F}
この式は、力\vec{F}をうける質量Mの質点の運動方程式と同じであることに注目してください。
以下の解説も参考にしてください。

剛体の運動とつり合い

剛体

図3.1 ☆☆キャプションはココに書いて下さい☆☆

剛体(Rigid body)とは、
質点の集まりであって、それらの、どの2質点の間の距離も変わらない,特殊な質点系のことを言う。
(注)どの2質点の間の距離も変わらなければ変形は起こらない。
固くて変形しにくい物体を理想化した概念である。

剛体の運動 

剛体は変形しない質点系なので、その運動は、重心の運動と、重心の周りの回転運動を合成したものになる。
重心の運動は前の節で説明したように、質点の運動と同じように扱える。
重心の周りの回転運動について解析するには、少し難しい数学が必要になる。

このテキストでは、固定軸の周りの回転と釣り合いの条件だけを学ぶ。
一般の回転運動については、大学で学ぶ。

固定軸のまわりの回転運動 

剛体が、剛体の中を通る固定軸の周りを回転する運動(車輪の回転など)を考える。応用も考え、回転軸は重心を通らなくてもよいように一般化しておく。
(注)なお、軸が動かないようにするためには軸受が必要である。工夫しても回転時に軸と軸受の間に多少の摩擦が生じるが、これは無視出来ると仮定する。

回転運動の表示法 

固定軸まわりの剛体の運動はどのように表示したらよいだろうか。
・剛体の位置;固定軸の周りを回転するので、(軸上にない)剛体の一点につけた印は、軸を中心とする円周上を回転する。その回転角を指定すれば剛体の位置(姿勢)が分かる。
 議論を簡単にするため、 剛体につけた印から固定軸へ垂線をひき、その足を原点,固定軸をz座標とする3次元座標xyzを考える。
剛体の印はxy平面上の点になるので、x軸から反時計まわりの角度\phiが決まる。 これが剛体の位置を指定する一次元変数である。
ゆえに剛体の固定軸まわりの回転は一次元の運動である。
・この\phiの時間変化\phi=\phi (t)を明らかにすれば、剛体の回転運動は定まる。
これを時間で微分したd\phi (t)/dtを角速度、
さらにもう一回時間微分したd^2\phi (t)/dt^2を角加速度と呼ぶ。

回転力(トルク) 

質点に、一定の力\vec F=(F_x,F_y,F_z)を作用させて、x軸方向に変位させる(質点はこの軸の上でしか動けないように拘束されているとする)。変位は一次元の変数xであらわせ、力のなした仕事は、W=\vec F \cdot (x,0,0)=F_{x}xである。
逆に物体に一定の力を加え、x軸の正方向にxだけ変位させた時の仕事Wが分かれば、質点を動かした力は
F_x=W/x
で求められる。
F_y,F_zは、質点をx軸上で動かすことには全く寄与せず、質点を動かした力は、
F_xなのである。従って力のなした仕事からは、F_y,F_zは求められない。
固定軸まわりの回転もその変位は一次元の変数である回転角度で表わせるので、これに倣って、
W/回転した角度 
を、回転にかんする力であると考える。この回転力をトルクとも呼ぶ。

図4.1のように剛体の任意の一点P(x,y,z)を考える(図では、z座標を省略し2次元のxy平面を書いてある)。

図4.1 ☆☆キャプションはココに書いて下さい☆☆


まず一点P(x,y,z)に力\vec F=(F_{x},F_{y},F_{z})が作用して、微小角\Delta\thetaだけ回転したときの仕事\Delta Wを計算し回転力を求めよう。
P点から回転軸(z軸)に垂線を下ろし、その足をOとする。
\vec{OP}の長さをr、x軸となす角を\thetaラジアンと置く。\theta=\phi+定数である。
剛体が微小角\Delta\theta回転して、点Pが図の点Qに移動したとする。
すると角\angle OPQはほぼ直角(=\pi /2)で\vec{PQ}の長さPQは、PQ=r(\Delta\theta)

\vec{PQ}のx成分とy成分は、図4-1中に示したように、それぞれ、-QR=-PQ*y/rPR=PQ*x/r
PQ=r(\Delta\theta)を代入すると、
\vec{PQ}_x=-y(\Delta\theta)\vec{PQ}_y=x(\Delta\theta)\vec{PQ}_z=0
\vec{F}=(F_{x},F_{y},F_{z})が、物体を\vec{PQ}だけ動かしたので、その仕事は \Delta W=\vec{F} \cdot \vec{PQ}(内積)。この右辺を内積の性質を用いて座標成分で表すと、F_{x}*(-y)\Delta\theta+F_{y} x\Delta\theta+F_{z}* 0
=(xF_{y}-yF_{x})*\Delta\theta
ゆえに、力\vec{F}のz軸まわりの回転力は\Delta W/\Delta\theta=xF_{y}-yF_{x}

回転力(トルク)の特徴

(1)力\vec{F}のz軸まわりの回転力は,\vec{F}_zには関係しない。言いかえるとz軸を固定軸とする剛体にz軸の方向の力を加えても、z軸の周りの回転は起こらない。
(2)剛体の1点P(x,y,z)に作用する力\vec Fを、\vec{OP}方向の成分\vec F_rと、Pの描く、z軸の点を中心とする回転円の(左回りの)接線方向の力\vec F_tに分解する。
この時、
・力\vec Fのz軸まわりの回転力は、\vec F_tのz軸まわりの回転力に等しい。
数式で表すと、xF_{y}-yF_{x}=x(F_t)_{y}-y(F_t)_{x}
・力\vec F_rのz軸まわりの回転力は、零である。すなわち、動径方向の力は回転に寄与しない。
これらはいずれも直観と合致する。

他の軸の周りの回転力

\vec{F}のx軸、y軸まわりの回転力も同様に計算できる。結果は、
x軸まわり;yF_{z}-zF_{y}=y(F_t)_{z}-z(F_t)_{y}
y軸まわり;zF_{x}-xF_{z}=z(F_t)_{x}-x(F_t)_{z}


原点まわりの力のモーメント

位置ベクトル\vec r=(x,y,z)の剛体の点Pに作用する力\vec Fの原点まわりの力のモーメントを、
\vec N=(x軸まわりのトルク、y軸まわりのトルク、z軸まわりのトルク)で定義する。
数式で書くと、
\vec N=(yF_{z}-zF_{y},zF_{x}-xF_{z},xF_{y}-yF_{x}),

トルクとベクトル積

以上の結果は、ベクトル積(クロス積ともいう)を用いると簡潔、正確に表現でき、計算も容易になる。
3次元ベクトル\vec a,\vec b のベクトル積\vec a \times \vec bは、3次元ベクトルであり,
大きさは\vec a,\vec b を2辺とする平行四辺形の面積に等しく、
方向はこの四辺形に垂直で、(\vec a,\vec b,\vec a \times \vec b)が右手系をなすように定めたものである。

ベクトル積の性質

\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}を3次元ベクトルとする。

性質0. \qquad \vec{a} を, \vec{c} と垂直な成分 \vec{a_\perp} と,平行な成分\vec{a_\parallel} の和に分解するとき、
\qquad \vec{a} \times \vec{c}= (\vec{a_\perp}+\vec{a_\parallel})\times \vec{c}=\vec{a_\perp} \times \vec{c}
性質1. \qquad \vec{a} \times \vec{b}= -\vec{b} \times \vec{a}
性質2. \qquad (\vec{a}+ \vec{b})\times \vec{c}= \vec{a} \times \vec{c} + \vec{b} \times \vec{c} 
性質3.\qquad (\vec{e_1},\vec{e_2}, \vec{e_3}) をそれぞれ長さ1で互いに直交し、右手系をなす、ベクトルとする。この時、
\qquad \vec{e_1} \times \vec{e_2} = \vec{e_3}, \vec{e_2} \times \vec{e_3} = \vec{e_1}, \vec{e_3} \times \vec{e_1} = \vec{e_2}
性質4.ベクトルを直交座標系(e_1,e_2,e_3)の座標成分で表示しておく。すると\vec a \times \vec b=(a_yb_z-a_zb_y,a_zb_x-a_xb_z,a_xb_y-a_yb_x)

性質0の証明;ベクトル積の定義から明らかである。
性質1の証明;ベクトル積の定義から明らかである。
性質2の証明;①  \vec{a}, \vec{b} と \vec{c} が直交する場合。
\vec{a} \times \vec{c} は、 \vec{a} を、\vec{c} と垂直な平面H内で90度回転((\vec{a},\vec{c},\vec{a} \times \vec{c})が右手系をなすように)して、長さを|\vec{c}|倍したベクトル。\vec{b} \times \vec{c} は、同じ平面H内で \vec{b} を、同じ方向に、90度回転して、長さを|\vec{c}|倍したベクトル。 (\vec{a}+ \vec{b})\times \vec{c}も、同じ平面内を同じ向きに90度回転し、長さを|\vec{c}|倍したベクトル。従って \vec{a}\vec{b}から作られる平行四辺形と\vec{a}\times \vec{c} \vec{b}\times \vec{c} からつくられる平行四辺形は相似となり、 (\vec{a}+ \vec{b})\times \vec{c}は後者の対角線となる。対角線ベクトルは2辺のベクトル和に等しいので、 (\vec{a}+ \vec{b})\times \vec{c}= \vec{a} \times \vec{c} + \vec{b} \times \vec{c}が示せた。 
② 一般の場合。
性質0より、\perp\vec{c}と垂直な成分を表すとすると、 (\vec{a}+ \vec{b})\times \vec{c}= (\vec{a}+ \vec{b})_\perp \times \vec{c} \qquad \qquad \qquad (1)
(\vec{a}+ \vec{b})_\perp =\vec{a}_\perp +\vec{b}_\perpなので、(1)式は、
= (\vec{a}_\perp +\vec{b}_\perp) \times \vec{c},①より、
= \vec{a}_\perp \times \vec{c}+\vec{b}_\perp\times \vec{c}=\vec{a} \times \vec{c}+\vec{b} \vec{c} \qquad 証明終わり。
性質3の証明;ベクトル積と(e_1,e_2,e_3) の定義から、明らかである。
性質4の照明;\vec a \times \vec b=(a_x 

トルクのベクトル積表示

位置ベクトル\vec r=(x,y,z)の剛体の点Pに作用する力\vec Fの原点まわりの力のモーメントを、
\vec N=(x軸まわりのトルク、y軸まわりのトルク、z軸まわりのトルク)で定義する。
数式で書くと、
\vec N=(yF_{z}-zF_{y},zF_{x}-xF_{z},xF_{y}-yF_{x}),
ベクトル積を用いると、\quad \vec N=\vec r \times \vec F

剛体の複数個所に作用する力の回転力 

次に剛体の多くの点に力を加えたときの回転力を求めよう。
力の作用点をP_i(x_i,y_i,z_i)、力を\vec{F_i}\quad (i=1,2,,,n)とする。
これらの力のもとで剛体がz軸まわりを\Delta\thetaだけ微小回転するときの、各力のなす仕事の合計は、
(\sum_{i=1}^{n}(x_{i}(F_{i})_{y}-y_{i}(F_{i})_{x}))*\Delta\theta
従って、作用点P_i(x_i,y_i,z_i)の力\vec{F_i}\quad (i=1,2,,,n)のz軸まわりの回転力は、
\sum_{i=1}^{n}(x_{i}(F_{i})_{y}-y_{i}(F_{i})_{x})
この結果は、力が一か所に作用する場合と全く同じ考えで導ける。
同様に、x軸まわりとy軸まわりの回転力も導ける。
従って、力\vec{F_i}\quad (i=1,2,,,n)の原点まわりの力のモーメントは、
\vec N=\sum_{i=1}^{n}\vec N_i
=\sum_{i=1}^{n}(y_{i}(F_{i})_{z}-z_{i}(F_{i})_{y},z_{i}(F_{i})_{x}-x_{i}(F_{i})_{z},x_{i}(F_{i})_{y}-y_{i}(F_{i})_{x})

回転運動の方程式 

てこの原理と力のモーメント

てこの原理については、

  • [[wikipedia_ja:てこ#.E3.81.A6.E3.81.93.E3.81.AE.E5.8E.9F.E7.90.86|ウィキペディ

力の作用線と作用線の定理

力の作用線とは、力の作用点を通り、力の方向と重なる直線のこと。 剛体の場合、作用線に沿って力の作用点を移動しても、力の作用は変わらない。何故かは、考えてみましょう。

剛体のつり合い

いくつかの力が作用し、剛体が静止したままであるか、
重心が等速直線運動を続け、重心の周りの回転が変化しない場合に、剛体(に作用している力)は釣り合っているという。

気体や液体の圧力と浮力

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