物理/力と運動の法則

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物理力と運動の法則

目次

力とその働き

物を動かす時、人は筋力を使ったり、牛馬の力を使う。こうした労働の経験から、大昔から、人は、力という概念が認識し、言語化してきた。 力の理解を深めるには、その働きについて理解する必要がある。

力の働き

力は物体の運動(速度)を変化させたり、物体を変形させる働きがある。

の 「2.2.1 力の性質」と 「6.1.2 力による運動の変化」 を見てください。

力の三要素とベクトル表示

力の働きは、
力の大きさ、力の向き、力が作用する作用点
の、3つで決まる、
事が、多くの経験から、知られている。
これらを力の三要素という。
力は、その作用点を始点とする(束縛)ベクトルで表わすと都合がよい。

力の作用線 

力のベクトルに重ねて引いた直線を力の作用線という。
力の作用線はその作用点を通る。

いろいろな力とその法則

力には、いろいろなものがある。

人間・動物の筋肉の力、万有引力 ,重力電気力(電荷のクーロンの法則)磁気力(磁荷のクーロンの法則)弾性力(ばねなどの力))、摩擦力、、機械の生み出す力、浮力、張力
など、である。

これらの力のいくつかを学ぶ。

万有引力 

ニュートンは、地球上の落体運動や惑星の運動を生じさせる力の根源は、物体間に働く引力であると認識し、2つの質点の間に働く引力を定める式を、ケプラーの法則から求め、万有引力の法則と名付けた。

この法則の理解には質量(正確には重力質量)という概念が必要です。

 重さと質量について 

人間は,物を持つと重さを感じる。そこで、人類は大昔から重さについて認識していた。
重い物を持ち上げるため、梃子(てこ)という器具を発明し、重さを正確に知る必要性が高まるとともに梃子の性質を利用した「天秤ばかり」という器具を発明した。

 梃子の原理 

梃子はすでに、紀元前5000年のエジプトのピラミッド建設でも利用されていた。
この当時、人類は、この梃子にかんする簡単な性質は、かなり知っていたのである。
一般的な梃子の原理もかなり前から経験的に知っていたと思われる。

ギリシャのアリストテレスやアルキメデス(Archimedes、紀元前287年 - 紀元前212年)は、梃子の一般原理を正確に述べ、
なぜこの原理が成立するか、論証を試みている。
アルキメデスは、経験から得られている梃子のつり合いに関するいくつかの簡単な事実を前提として、 厳密に梃子の一般原理を論証で導いた。

天秤ばかり 

天秤ばかりは、紀元前5000年ころにはエジプトで使われていた。
均質な一本の棒の真ん中を支点にして、支点から等距離にある両端に皿を固定(あるいは、ぶらさげ)、
片方の皿に計量したい物体をのせ(棒は傾く)、次に他方の皿に「分銅」という重さの分かっている重りを次々とのせて、
釣り合わせる(=棒を水平な状態に保つ)。このときの分銅の重さの合計が、物体の重さになる。
天秤は、支点から等距離に働く、同じ大きさの重さ(地球中心への力)は釣り合うという、梃子の性質を利用したもの。

質量(正確には重力質量) 

重さ(地球に向かう力)が、なぜ生じるのか、長い間不明であった。
ニュートンは、地上の物体が地球の中心に向かうによる万有引力の法則の発見とともに、



 質量の測り方

基準物質の質量を1kgと定めておく。
当初の基準物質は、水1リットル(1000cc)と定められた。 質量を知りたい物体を天秤ばかりの片側のさらに乗せ、これと釣り合うように、もう一方の天秤の皿に水を注ぐ。
この時の水の体積を計量すれば、物質の重さが測れる。
これでは不便なので、色々な体積の水とつりあう分銅を作っておき、これを水の代わりにする。

 万有引力の法則 

万有引力の式中の万有引力定数Gについては、

を参照のこと。
ケプラーの法則とニュートンの運動の第2法則から、万有引力の法則は、数学を利用して、導ける。次章で紹介する。


 地球の重力と重力加速度 

地球上の物体に対して働く地球の万有引力と地球自転による遠心力(4章1節参照)との合力を地球の重力という。

物体に作用する重力を質量で割ったものを重力加速度といい、$g$で表す。場所によって多少異なるが、地球表面近くでは、ほぼ$g=9.8 m/s^2$である。
この定義により、質量$M$の質点に働く重力は、$Mg$となる。

(注)ニュートンの運動の第2法則により、重力加速度は、重力という力をうけて落下する物体の加速度に等しいことが分かる(4章一節)。
このため、これを重力加速度の定義にする場合もある。

 質量と重さ 

物質は、その質量$M$に比例した力(重力)$Mg$を地球から受ける。人が、物体を持った時重さ(重量)を感じるのは、重力を受けて落ちようとする物体を支えるために、重力と、同じ大きさで逆むきの力、を使うからである。
物質の重量は、場所によって、重力加速度が変わるため、変わる。
しかし、質量は、その物質固有のもので、不変である。
天秤ばかりでは計量すべき物体と分銅はわずかな距離しか離れていないため、両者に働く重力加速度は、場所によって変わるものの、 同一である。両者の質量を$M,m$とし、その場所の重力加速度を$g$とすると、天秤が釣り合う(両者に作用する重力が等しい)ことを式で書くと$Mg=mg$ であり、$M=m$となる。
天秤ばかりは、分銅の質量と計量物体の質量が同じかどうかを判断する器具であることが分かった。

電気力、磁気力

9章で学ぶ。簡単な説明は、 ウィキブックス(中学校理科 第1分野) の4章を参照のこと。


弾性力とフックの法則

およびフックの法則(ウィキペディア)

摩擦力

圧力

気体や液体の中におかれた物体の表面は、気体や液体から力を受ける。  
単位面積の面に働く力を圧力といい、気体の場合は気圧、水の場合は水圧ともいう。  
気体で圧力が生じるのは、それらを構成する膨大な個数の分子・原子がいろいろな方向に、はげしく飛び回っているため物体の面に衝突し、力を与えるためである。
水圧は、水の流動性と重力にもとずく。

次の法則が知られている。
 ①気圧や水圧は、同じ場所ならば、どのような向きの面に対しても一定である。  
 ②下部になるほど、圧力は大きくなる。但し気体の場合はわずかである。 
水圧についての法則は、運動法則が必要なので、 4章4節 で学ぶ。
気圧については、「7章 気体の分子運動論」で学ぶ。

作用・反作用の法則に基づく力

力の一般法則

作用・反作用の法則(運動の第3法則)

第一の物体が第二の物体に力(作用と呼ぶ)を及ぼすときは、
第二の物体は第一の物体に力(反作用)を及ぼす。
作用・反作用の力の作用線は同一であり、力の大きさは等しく向きは逆である
という経験則(実験や観測で確かめられた法則のこと)である。

力の合成と分解の法則 

一つの質点に、力 $F_1, F_2, \cdots , F_n$ が同時に働いた時と、$F = F_1 + \cdots + F_n$(ベクトルとしての和)という一つの力が働いたときとは、この質点の運動は同一であることが実験により、確かめられている。
このため、力 $F_1, F_2, \cdots , F_n$の和は、力$F = F_1 + \cdots + F_n$と同一であるとみなせる。但しこれらの力の作用点は同じである必要がある。
逆に一つの力を同一点に作用する2つ以上の力の和に分解すると物体の運動を簡単に見つけられることがある。これらについては

  • 力(wikipedia) の「4 力の合成と分解」を見てください。



 

運動の3法則

ニュートンは以下に述べる運動の3法則と万有引力の法則を基本法則として採用した。
そして、これらの基本法則から、地上の物体や惑星の運動を数学を用いて、明らかにした。
これ以降、これらの法則は地上のあらゆる物体(気体、液体、固体)の運動や天体の運動の解明に決定的役割を果たし、
最近まで、万能と思われてきた。
(注)20世紀になって、この法則がなりたたない現象(光速度に近い物体の運動や原子や電子など微小な物質の運動)が認識され、
相対論的力学や量子力学が生まれた。
これらは大学で学ぶ。

運動の第一法則(慣性法則)

慣性系から観測すると、力を受けていない質点は等速の直線運動をするという経験則であり,
慣性系は存在すると主張する法則である。
地上での観測は、ほぼ慣性系での観測とみなせることが、実験の結果、分かっている(但し、地球からの引力を外力として考慮するという条件のもとで)。
ニュートンは、ガリレオ、デカルトにより、発見された法則を、運動の基本法則の第一番目に採用したのである。

運動の第二法則(運動法則)

慣性法則より、物質の速度を変えるにはその物質に力を作用させねばならないことになる。
物体が力を受けた時、その物体の速度(あるいは運動量)がどのように変わるかを明らかにしたのが第二法則である。
前述のように、ギリシャ時代には、物体の速度$v$は、加えた力$f$に比例し、重さ$m$に反比例すると考えられた。
式で書くと$v \propto f/m$、変形すると$f \propto mv$
力が作用しないと$v$は不変であること、地球から一定の引力をうけて落下する物体が等加速度運動する(ガリレオ)ことから、
$f=mα$ 、αは加速度(=速度の時間当たりの変化、すなわち速度の微分)という、修正は、最も自然であろう。
これを、$mα=md/dt(v)=d/dt(mv)$を用いて表現すると,
$f=d/dt(mv(t))$
これをヴェクトル量として正確に表現したのが、この法則である。
この法則の理解には慣性質量と運動量という概念が必要である。

 慣性質量 

現在では、慣性質量は、重力質量と等しいことが、実験により確かめられている。
今後は単に質量と呼ぶ。

運動量

ニュートン以前にも、物質の運動状態そのものをとらえようとして、多くの先人たちによって、運動量の萌芽的概念が唱えられ、運動の法則の表現に用いられてきた。 
アリストテレスでいえば、物体に働く強制力F 、運動への抵抗力 rと物体の速さvには,$ rv∝F$ という関係があった。  
$ rv$を運動量とみなせば、これが、運動量概念を用いた運動法則である。

デカルトは、運動の量という概念を導入し、物体の運動は、この運動量が保たれるように行われるととなえ、運動量保存則の端緒を開いた。
これを2つの玉の衝突問題(衝突後、2つの玉は、どのように運動するか)に利用した。
ホイヘンスは、衝突問題のデカルトの研究をさらに発展させた。しかし彼は、部分的にしか正しい結論は得られなかった。
その原因は、運動量の定義が、不完全であったことにある。
ニュートンは、初めて正しい運動量概念を与えた。
ニュートンの運動量の定義;質量$m$で速度ベクトル$\vec v$ を持つ質点の運動量$P$ は、$P=m\vec v$

運動の第二法則と微分方程式

この準備のもとで運動の第2法則は

で与えられる。
この式はベクトル値の時間関数 $m\vec x(t)$ の時間 $t$ についての2階の微分が $\vec{F}$ に等しいという、微分を含んだ方程式なので、微分方程式と呼ばれる。

今後は特に断らないときは力$\vec{F}$は一定として議論をする。
$\vec{F}$ が時間とともに変わる時は、微分方程式の知識が必要なので大学で学ぶ。

第二法則の多義性

第二法則は、質量と加速度(あるいは運動量の時間変化)と力の間の関係を与えるので、色々な意味を持つ。
・$F$ が(力の法則などから)分かると、初期時刻 $0$ の質点の位置と速度を与えれば、この方程式を解いて、任意の時刻 $t \ge 0$ の質点の位置が分かる。
それを微分して速度、もう一度微分して加速度が分かる。

$\quad F$が一定の場合の、方程式の解

$\qquad$質点の質量を$m$、作用する力を$\vec F$(一定)、初期時刻$t=0$における質点位置を$\vec x_0$,初期速度を$\vec v_0$とする。
$\qquad$ 運動方程式;$m (d^2/dt^2)\vec x(t)=\vec F$  
$\qquad$ 加速度;$(d^2/dt^2)\vec x(t)=\vec F/m$   
$\qquad$ 速度;$\vec{v}(t)=(d/dt)\vec x(t)=(\vec F/m)t+\vec v_0$$\quad$(検算:微分すると加速度$\vec F/m$が得られ,初期速度は$\vec v_0$なので、速度の解である)
$\qquad$ 位置;$\vec{x(t)}=\frac{1}{2}(\vec{F}/m)t^2+\vec{v_0}t+\vec x_0$ $\quad$(検算:初期位置$\vec{x_0}$、$t$で微分すると速度の解となる)


・また、質量の分かっている質点に力を作用させ、その運動量の時間変化(あるいは加速度)を測れば、力の大きさが分かる。
・質量を求めたいときはこれに大きさの既知な力を作用させて動かし、その加速度を計測すればよい。

運動の第三法則(作用・反作用の法則)

これについてはすでに3章で説明した。

ガリレイ変換とガリレイの相対性原理

どのような慣性系で観測しても力学の法則は同じであるという原理。 一つの慣性系にたいして等速直線運動する観測系を考えると、力の働いてない物体はやはり、等速直線運動するので慣性系であり、運動の第2、第3法則は成立することを主張している。

この原理は長い間物理学の指導原理となっていたが、20世紀になって、アインシュタインによって修正された。

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