物理/運動の法則の応用

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物理運動の法則の応用

目次

解説

運動の3法則、万有引力の法則と力の法則を用いると、分子から銀河まであらゆる物体の運動を求めることが出来きる。

その正しさは地上の物体や人工衛星、惑星の運動などで確かめられている。
しかし、もっとはるかかなたの宇宙でもこれ等の法則は正しいのだろうか。
天体観測は、世界各地で行われ、年々新しい発見がされているが、現在のところ、この理論が間違っていることを示す観測結果は、得られていない。
そこで、これらの法則は宇宙の全体を支配しているものと、現在は信じられている。

運動の3法則からはエネルギー保存則や運動量保存則などの重要な保存則を導く事が出来る。
これらの保存則は、色々な運動を調べるとき、大変役立つ。これらについては次節で学ぶ。

質点の色々な運動

最初に最も簡単な運動から考える。
それは質点とみなせる物体の運動である。

質点の落体運動

地球上の物体は高いところから落とすと、時間とともに速度を増しながら落下する。
質点とみなせる物体の落下運動を、運動法則と力の法則を用いて、解析しよう。
質点の質量をUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-220-QINUとすると、そこに作用する重力による力は、
真下(厳密には地球の重心;後で学ぶ)の方向・向きに大きさUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-221-QINUである。
落下の向きを負にした落下方向の一次元座標を考えると、重力加速度はUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-222-QINUで、質点UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-223-QINUに作用する力はUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-224-QINUである。
落下の加速度をUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-225-QINUと置くと、運動の第2法則よりUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-226-QINU.
ゆえに質点の落下加速度UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-227-QINUは負の重力加速度UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-228-QINUに等しい。
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-229-QINUで微分してUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-230-QINUとなる関数はUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-231-QINUなので、質点の速度はUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-232-QINUである。
ここでcは定数で、初期時刻0における質点の速度であり、初期速度と呼ばれる。
微分してUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-233-QINUとなる関数を求めれば質点の位置UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-234-QINUが得られる。
ここで、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-235-QINUは定数で初期時刻0での質点の位置(高さ)である。
これはガリレオが明らかにした落体法則である。
参考文献;

投射体の運動

質点を地面に対して角度UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-236-QINU(ラジアン)、速さUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-237-QINUで投げたときの、質点はどのような運動を行うだろうか。
ガリレオは、慣性法則と落体の法則を組み合わせて利用して、放物線を描いて飛ぶことを発見した。
ニュートン力学を用いれば、運動の第2法則と質点に働く力(重力)から、以下のように、この運動を導ける。

適切な座標系をいれる

質点が投げ出された場所を原点とし、飛んでいく方向に地面と水平に引いた半直線をx軸の正の側に、地面と直角で上方に向かう半直線をy軸の正の側とする座標を定める。図参照。

質点に作用する力を求める

空気抵抗を無視すれば、質点に作用する力は、地球からの重力だけである。この力は、質点の質量をUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-238-QINU,重力加速度をUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-239-QINUとすると、質点の位置に関係なく常に、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-240-QINUである。

運動の第2法則から質点の運動方程式をつくる

質点の位置ベクトルをUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-241-QINUで表すと
運動方程式は、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-242-QINUである。
座標成分表示すると
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-243-QINU,UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-244-QINU UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-245-QINU

運動の初期状態の指定

投げ上げた瞬間を時刻UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-246-QINUとおくと、質点の初期位置はUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-247-QINU,UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-248-QINU 初期速度はUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-249-QINU

運動方程式を初期状態を使って解く

(1)x成分の式を解く
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-250-QINUは、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-251-QINUなのでUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-252-QINU。UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-253-QINU  tで微分して零となるtの関数は定数なのでUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-254-QINUと書くと、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-255-QINU
速度の定義より、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-256-QINUなので、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-257-QINU.UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-258-QINU UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-259-QINUで微分してUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-260-QINUとなるのはUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-261-QINU(bは未知定数)なので、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-262-QINU
初期条件から、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-263-QINU,UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-264-QINU またUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-265-QINUなのでUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-266-QINU。
故に、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-267-QINU

(2)y成分の式を解く   
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-268-QINUは、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-269-QINU UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-270-QINU tで微分してUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-271-QINUとなる関数はUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-272-QINU(cは未知定数)なので、
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-273-QINU UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-274-QINU故にUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-275-QINU
tで微分してUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-276-QINUとなる関数は、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-277-QINUなので、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-278-QINU   
初期速度の条件から、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-279-QINU UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-280-QINU UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-281-QINU   
故に、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-282-QINU

(3)運動の軌跡(xとyとの関係式)を求める   
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-283-QINUの式からUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-284-QINU
これをUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-285-QINUに代入すると
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-286-QINU
これは上に凸な放物線である。
参考文献は

惑星運動

前述のようにケプラーは、火星と太陽の観測データをユークリッド幾何学を巧みに利用して分析し次の惑星運動の3法則を発見した。

惑星運動の3法則を運動の第2法則と万有引力の法則から導く

この3法則は、運動の第2法則と万有引力の法則から導くことが出来るが少し難しい数学が必要である。大学で学ぶ。
惑星の軌道を太陽を中心とする円運動に限定すると、高校の数学の知識で3法則を導ける。
この場合ケプラーの第一法則は、仮定から、明白なので、第二法則から始める。

ケプラーの第2法則の導出 
図 惑星の位置座標


第二法則は、太陽と惑星を結ぶ動径の単位時間に掃く面積が一定であることを主張する。円運動のばあい、これは等速円運動であることと同じである。
そこで等速円運動であることを導こう。
太陽と惑星は質点として扱い、質量をそれぞれUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-287-QINUとする。

惑星の軌道面をxy平面にし、太陽をその原点にとる。円運動の半径をUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-288-QINU, 太陽と時刻UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-289-QINUにおける惑星を結ぶ線分が、x軸となす角度をUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-290-QINUとおく。


惑星Pの位置;UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-291-QINU
惑星の速度;UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-292-QINU
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-293-QINU =UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-294-QINU

惑星の加速度;UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-295-QINU
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-296-QINU
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-297-QINU
惑星に働く力;万有引力の法則より、太陽の方向に向いた、大きさUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-298-QINUの力なので
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-299-QINU
と表せる。
この力が、惑星の運動を変化させ、上述の加速度を生じさせたのだから、運動の第2法則UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-300-QINUより、
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-301-QINU
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-302-QINU
変形すると、
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-303-QINU
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-304-QINU

UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-305-QINU とUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-306-QINUは直交するベクトルなので、(1)式が成立する必要十分条件は、
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-307-QINU,
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-308-QINU
である。
(2)式から、角速度UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-309-QINU(定数)が
(3)式から、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-310-QINUが
得られる。
これらより、惑星は等角速度
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-311-QINU UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-312-QINU (4)
で太陽の周りを回転することが分かり、ケプラーの第2法則が得られた。

ケプラーの第3法則の導出 

惑星が太陽の周りを一周する時間UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-313-QINU(周期という)は、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-314-QINUなので、(4)式より、
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-315-QINU,
故にUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-316-QINU, UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-317-QINU
これは軌道が円の場合のケプラーの第3法則である。

万有引力の法則を,ケプラーの法則と運動の第2法則から導く

惑星が太陽の周りを円運動しているとき、太陽が惑星に及ぼしている力を計算する。
ケプラーの第2法則より、円運動する惑星は角速度一定である。これをUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-318-QINUとする。
太陽の位置を原点とし円の半径をUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-319-QINUとすると、この惑星の加速度はUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-320-QINU 。これは、太陽にむかう大きさUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-321-QINUのベクトル。
運動の第2法則より、惑星に働く力UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-322-QINUは、太陽の方向に、大きさUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-323-QINU
ここで、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-324-QINU は惑星の慣性質量である。
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-325-QINUをUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-326-QINUの関数で表すためケプラーの第3法則と用いる。
惑星の公転周期UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-327-QINUと円の半径UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-328-QINUの間にはUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-329-QINU;定数
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-330-QINUなので UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-331-QINU∴UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-332-QINU
それゆえ、力の大きさは
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-333-QINU
さらに、太陽の質量UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-334-QINUがUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-335-QINU倍になると、質量UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-336-QINUの太陽がUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-337-QINU個あり、それぞれが惑星に上記の力を与えると考えられる。
すると惑星に働く力はUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-338-QINU倍になるので力の比例部分UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-339-QINUは太陽の質量UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-340-QINUに比例することが分かる。
比例定数をUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-341-QINUとおくと、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-342-QINU
従って惑星に働く力の大きさは、太陽の方向に、 UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-343-QINU
これは万有引力の法則である。
(注)この式は万有引力の法則の式と同じだが、質量UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-344-QINUは、慣性質量であり、対称性から太陽の質量UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-345-QINUも慣性質量と考えられる。
しかしニュートンは重力を生む質量は、慣性質量と完全には一致しない可能性もあると考え、重力質量という概念を生みだしと思われる。
既述のように、多くの実験の結果、両質量は同一であると考えられている。
重量質量を使わず、慣性質量だけを用いても、ニュートン力学を構成することが出来る。これを提唱する物理学者もいる。
それには万有引力の法則のかわりに、次の法則を採用すればよい。
外力が働かないときは、どんな2質点も、お互いに相手に向かって, 加速度運動して近ずく。両者の加速度は、両者の距離の2乗UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-346-QINUに反比例し、それぞれの慣性質量の比に反比例する。
式で書くと、
質点1の慣性質量と加速度の大きさをUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-347-QINU,UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-348-QINU  
質点2の慣性質量と加速度の大きさをUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-349-QINU,UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-350-QINU 
とすると、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-351-QINU、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-352-QINU,UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-353-QINU 
この法則と運動法則により2質点間に働く力(万有引力)を求めると、
ニュートンの万有引力の法則と同じ式だが、質量は慣性質量になり、
重量質量を用いずニュートン力学が構成できる。

振り子と単振動

質点のつり合い

質点に力F1,,Fnが作用し、質点が静止したまま(あるいは等速直線運動)であるとき、それらの力は釣り合っているという。
釣り合いの条件は、F1+ +Fn=0です(運動の第2法則と力の合成則から導出できる)。

仕事とエネルギー

仕事

物体に力を加えて動かす時、力はこの物体に仕事をするという。
仕事(の量)は力の大きさと動かした距離の積に比例する。
正確には、加えられる力UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-354-QINU が一定で、
力の向きに対して角度UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-355-QINU[rad] だけ傾いている直線上を UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-356-QINU 移動したとき、
仕事W は、
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-357-QINU    
で定義する。
ここで任意のヴェクトルUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-358-QINUに対して、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-359-QINUはその大きさUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-360-QINUを表す。


特に、この式においてUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-361-QINU(すなわち UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-362-QINU)とすると
「加えられる力が一定であり力の方向が運動の方向と一致している場合」になり、
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-363-QINU である。
また、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-364-QINU(UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-365-QINU)のとき、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-366-QINUとなる。
すなわち、力が運動の方向と直角方向にはたらいている場合、その力は仕事をしない。

UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-367-QINUと表現すると、
仕事は、力の方向にUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-368-QINUだけ動かしたときの仕事に等しいことが分かる。

UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-369-QINUと表現すると、
仕事は、
大きさUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-370-QINU のUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-371-QINU方向の力を加えて、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-372-QINUだけ動かしたときの仕事に等しい
ことが分かる。


仕事の内積を用いた表現

内積は、仕事の記述や計算に便利な数学の概念である。

内積の定義と仕事の内積表現

ベクトルUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-373-QINUの内積UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-374-QINUは、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-375-QINUで定義する。
ここで、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-376-QINUは、ベクトルUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-377-QINUのなす角(UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-378-QINU )である。

ウィキブックスでは2次元のベクトルを中心にして説明しているが、
3次元ベクトルの場合にも、成り立つように修正することは容易である。
例えば、ベクトルUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-379-QINUの長さは、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-380-QINU,
ベクトルの内積は、この長さを使えば、全く同じ式で良い。

内積を使った 仕事の表現

内積 UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-381-QINUを用いると、
物体に力UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-382-QINUを加えて、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-383-QINU(P点からQ点まで)動かした時の力のなす仕事は、
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-384-QINUと表せる。

内積の性質

仕事は、前述のように内積で表現できるので、内積の性質を調べておくと、仕事について考察する時に役に立つ。
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-385-QINUが、すべて同じ次元(2か3)のベクトルとし、 UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-386-QINUは実数とする。

(1)UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-387-QINU
(2)UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-388-QINU 、
ここでUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-389-QINUはそれぞれUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-390-QINUのx座標成分、同様に、添え字2はy座標成分、3はz座標成分
直交座標系はどんなものでも良い。しかしすべてのベクトルは同じ座標系で座標成分表示しなければならない。
(3)UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-391-QINU   
(4)UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-392-QINU
が成り立つ。

(証明)
(1)は、内積の定義から明らか。
(2);次の三角形の余弦定理を利用する。
三角形の第2余弦定理;
図のようなUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-393-QINUを考える。
頂点A,B,Cの対辺の長さをそれぞれUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-394-QINUとし、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-395-QINUとする。
すると、UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-396-QINU
余弦定理の証明;頂点UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-397-QINUから対辺UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-398-QINUにおろした垂線の足をUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-399-QINUとする。
ピタゴラスの定理により、
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-400-QINU。UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-401-QINU 右辺の第2項に、再び、ピタゴラスの定理を適用して、
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-402-QINU UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-403-QINU UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-404-QINUを代入すると、
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-405-QINU,UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-406-QINU UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-407-QINUなので、代入すると
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-408-QINU
証明終わり。
(2)の証明  
ベクトルUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-409-QINUとUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-410-QINUを、
始点が点UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-411-QINUである有向線分で表現し、その終点をUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-412-QINU,UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-413-QINUで表す。
するとUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-414-QINU, UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-415-QINUである。
ベクトルUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-416-QINUを導入すると、
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-417-QINU
3角形UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-418-QINUを考え、第2余弦定理を適用しよう。
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-419-QINUとおく。すると、
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-420-QINU
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-421-QINUが得られる。
この式を変形してUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-422-QINUだけを左辺に置くと、
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-423-QINU 。
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-424-QINUなので、

UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-425-QINU
この右辺を、ベクトルの直交座標成分で表すと、次式が得られる。
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-426-QINU
UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-427-QINU
(2)の証明終わり。
(性質3)の証明;ある一つの直交座標系をさだめ、両辺を、性質(2)を利用して、座標成分であらわす。両辺が等しいことが分かる。
(性質4)の証明;同様に、3つの式を、座標成分表示すれば、みな等しいことが、簡単に分かる。

物体が曲線運動するときの仕事量の求め方

力を受けた時の物体の運動は直線とは限らないが、運動の軌跡を細かく区切って眺めると、線分に近いので、物体の変位は、ごく短い線分をつなぎ合わせたものと考える。すると各線分毎に仕事を計算しそれをたせば、全体の仕事量を求めることができる。

エネルギー

物質の持っている仕事をする能力をエネルギーという。

仕事の単位

仕事の定義UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-428-QINUから、仕事の単位は、力の大きさUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-429-QINUの単位と長さUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-430-QINUの単位を掛けたものになる(UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-431-QINU は無単位なので )。
MKSA単位系では、力の大きさの単位はUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-432-QINU(ニュートン)、長さの単位はUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-433-QINU(メートル)なので、仕事の単位はUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-434-QINU となる。
これをUNIQ4bffa5943263413e-MathJax-435-QINU(ジュール)と呼ぶ。UNIQ4bffa5943263413e-MathJax-436-QINUである。

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