物理/音と音波

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目次

音と音波

音波とは、狭い意味では、空気の粗密の振動が伝わっていく縦波である。
広義には、気体、液体、固体の中を伝わる縦波(粗密波)を音波という。
音波は波なので、反射、屈折、回折、干渉など、波に共通する特有の性質をもつ。
そのため、「4.1 波の性質」で述べたことは、すべて成立する。

音波の伝わり方

音波の速さ

乾燥した空気をつたわる音波の速さ UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-251-QINU は
空気温度 t℃ が高くなると早くなり、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-252-QINU
で表せる(注参照)。
液体や固体中の音波の速さは、空気中よりずっと大きい。
音速の測定や理論研究の歴史、種々の媒質中の音速については、

を参照のこと。

(注) 空気は静止していると仮定している。
一定速度で動く空気中では、
その空気に対する音の相対速度が、式(1)で表される。

音の3要素

音の3要素 とは次の3つである。

(1)音の高さ;
振動数の高い音ほど、高音に聞こえる。
1オクターブ高い音とは、振動数が2倍になることをいう。
ちなみに、人間の耳に聞こえる音は、振動数が20Hzから2万Hzの音である。
可聴音という。
(2)音の強さ;
音には強く聞こえる音と弱く聞こえる音がある。
音の強弱は、媒質の密度、波の振幅と振動数によって決まる。
媒質密度と振動数が同じならば、振幅の大きな音ほど強く聞こえる。
(3)音色;
発音体が違うと振動数と強さが同じ音でも、音の感じが違う。
これを音色あるいは、ねいろという。
波の多くは、波形が正弦関数で表せないので、
振動数や振幅が同じでも、波形が異なるため音色が異なる。

音の性質

以下の(1)から(7)までの音の性質については、

  • [[wikibooks_ja:高等学校理科 物理I 波/音波と振動|高等学校理科 物理I 波/音波と振]動]で学んでください。

以下には、簡単に要点を補足をします。
この節では、座標系を考えるときは、空気が静止してみえる慣性座標系を用いる。

(1)音のうなり

振動数(周波数)がわずかに異なり、変位の方向が等しい2つの音波(波)が干渉して、
振動数が中間とみなせ、
振幅がゆっくり周期的(振動数は2つの音波の振動数の差に等しい)に変わる合成波を生ずる現象を言う。
音声波では、ウォーンウォーンという、うなりに似た音に聞こえるため、「うなり」と言われる。
一般の波でも、うなりは当然生じる。



うなりに関する命題

2つの波の変位の方向が同じなので、その方向を、変位量の座標軸(y軸)に選ぶ。すると
音源1と音源2からの正弦波を個別に、ある地点Aで観測すると、
その変位量は,時刻原点を適切に選べば、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-253-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-254-QINU
と書ける。
ここで、 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-255-QINU は微小数。
この2つの波が同時にA地点にくる場合、その合成波は次の命題で与えられる。

命題
適切に時間の原点を選び、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-256-QINU、 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-257-QINU とおけば、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-258-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-259-QINU
ここで、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-260-QINU 
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-261-QINU は、 
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-262-QINU
で与えられる。
注を参照のこと。

証明;
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-263-QINU なので、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-264-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-265-QINU
両者の初期位相角が、絶対値が等しく、逆符号になるよう、時間の原点を変えよう。
そのため、時間原点を a だけ移動させた時間を s とおくと、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-266-QINU 。
これを、上の2つの式に代入して、変形すると
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-267-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-268-QINU
初期位相条件を満たすような a を求めるため、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-269-QINU
とおき、a を求めると、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-270-QINU
すると、それぞれの初期位相は、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-271-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-272-QINU
このため、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-273-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-274-QINU
これら2式に、三角関数の加法定理を適用すると、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-275-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-276-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-277-QINU
従って
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-278-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-279-QINU
最後に、この右辺が UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-280-QINU を適切に決めれば UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-281-QINU と表現できることを示そう。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-282-QINU
 を加法定理を適用して書き直すと
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-283-QINU 
この式を、式 (d) と比較すると
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-284-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-285-QINU
この2つの式から、式(c)が得られる。
さらに、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-286-QINU を用いて UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-287-QINU を計算すると、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-288-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-289-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-290-QINU ここで、加法定理からUNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-291-QINU なので、 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-292-QINU
この式を用いると
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-293-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-294-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-295-QINU
これでAを得る。

(注)UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-296-QINU のときは、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-297-QINU
から、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-298-QINU は時刻 s とともに振動する。
このため、合成波の形は振動数 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-299-QINU の正弦波からずれる。
このずれは、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-300-QINUと UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-301-QINU が近いほど小さくなる。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-302-QINU のときは、式cから、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-303-QINU となり、式 a は、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-304-QINU
となるので、
合成波は、振動数 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-305-QINU の正弦波が振幅をゆっくり周期的に変動させる波になる。
これより2つの正弦波の合成波は、
両者の振動数が近く、両者の振幅も近いならば、
「振動数(周波数)が2つの元の波の振動数の中間で、
その振幅が 振動数 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-306-QINU で振動する波形」
に近いことが分かる。
これにより、ウォーンウォーンという、うなりを生じる理由が理解できる。

(2)発音体の振動(その1)。弦の固有振動

張った弦をこすったり、はじいて振動させると、波が起き、両側に進行し、固定端で反射する。
反射波と進行波は重なり合って合成波である定常波ができる(注参照)。
弦は、図の実線と点線の間を往復運動する。 弦の両端は固定され振動しないので、定常波の節になる。
この定常波の振動を、弦の固有振動、その振動数を固有振動数という。
ファイル:GENPHY00010402-01.pdf

(2-1)定常波の波長
両端の変位が零であることから、定常波動の波長 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-307-QINU と弦の長さ UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-308-QINU の間には次の関係が成立つことが分かる。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-309-QINU 変形すると
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-310-QINU
ここで、nは定常波の腹の数。
上の式から、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-311-QINU は n の関数であることがわかるので、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-312-QINU とかく。
すると
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-313-QINU
腹の数が1の固有振動を基本振動(1倍振動)、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-314-QINUの固有振動を、n倍振動と呼ぶ。

進行波の速さをVとし、n倍振動数を UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-315-QINU 、その波長をUNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-316-QINU とかくと、 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-317-QINU 
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-318-QINU
が成立つ。

(注)「1.4.6.3 定常波と進行波」を参照のこと。

(2-2)弦を伝わる波の速さ
未完

(3)発音体の振動(その2) 気柱の振動

細長い管の中の柱状の空気のことを気柱という(注参照)。
管中の波は、その両端で反射し、元の波と反射波は重ねあって合成波をつくる。
この合成波は定常波になる。
その波長や周波数(振動数)は、ある固有の値しか取れない。
これらについて学ぶ。
波の変位量としてなにを用いているかで、同じ端でも自由端にも固定端にもなるので注意してください。

(注)管の断面の大きさが音波の波長に比べて小さいと、
管のなかの音波は、管の軸に沿って進む平面波になる。
気柱ではこのような波を扱う。

参考文献;
ウィキブックス(高等学校理科 物理I 波/音波と振動 1.3 気柱の振動)

UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-319-QINU(3.1) 気柱の固有振動
以下では、管の長さを UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-320-QINU ,音速を UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-321-QINU で表す。

UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-322-QINU(3.1.1) 閉管の場合
図を参照のこと。 ファイル:GENPHY00010402-022.pdf

UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-323-QINU 閉管とは、一方が閉じ他端が開放されている音響管のこと。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-324-QINU この管の定常波は、片方の端が腹で他端が節になる。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-325-QINU 音を空気の位置の振動とみると、閉端は固定端で定常波の節、開放端は自由端で、定常波の腹になる。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-326-QINU 疎密波と考えると、閉端は自由端で定常波の腹、開放端は固定端で定常波の節になる。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-327-QINU 波長が最も長い定常波は、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-328-QINU 一方の端が腹で他端が節になり、他に腹も節もない波であり、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-329-QINU 基本振動という。この定常波は、気柱の長さ l の中にUNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-330-QINU 波長あるので、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-331-QINU 波長は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-332-QINU,周波数は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-333-QINU である。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-334-QINU 波長が2蕃目に長い定常波は、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-335-QINU 節である固定端から UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-336-QINU の所にも節をもち、この間は波長の2分の一、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-337-QINU 残りの部分に波長の4分の一があるので、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-338-QINU 気柱部分は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-339-QINU 波長である。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-340-QINU 故に波長は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-341-QINU,周波数はUNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-342-QINUで3倍振動である。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-343-QINU 一般にn(UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-344-QINU)番目の振動は、長さlの気柱の中に 
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-345-QINU 波長分あるので、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-346-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-347-QINU ここで、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-348-QINU はこの定常波の波長、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-349-QINU は、節と節の間の距離(=腹と腹の距離)を表す。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-350-QINU 故に波長 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-351-QINU、 周波数 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-352-QINU で,(2n-1)倍振動。

UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-353-QINU(3.1.2) 開管の場合
図を参照のこと。 ファイル:GENPHY00010402-03.pdf

UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-354-QINU 開管とは、両端とも開放された音響管のこと。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-355-QINU 波を空気の位置の振動とみると、両端は自由端であり、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-356-QINU この管の定常波は、両方とも腹になる。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-357-QINU 波を粗密波とみると、両端は固定端であり、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-358-QINU この管の定常波は、両方とも節になる。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-359-QINU  波長が最も長い定常波は、腹(ないし節)が両端にだけあるもので、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-360-QINU  基本振動と呼ぶ。長さlの気柱中に2分の一波長あるので、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-361-QINU 波長は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-362-QINU、周波数(振動数)は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-363-QINUである。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-364-QINU 2番目に波長の長い定常波は、両端と管の真中に腹(あるいは節)がある波で、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-365-QINU 波長は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-366-QINU、周波数は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-367-QINUであり、2倍振動という。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-368-QINU 一般にn(UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-369-QINU)番目の振動は、長さlの気柱の中に  UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-370-QINU 波長分あるので、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-371-QINU UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-372-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-373-QINU 故に、波長は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-374-QINU ,周波数は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-375-QINU でn倍振動。

UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-376-QINU(3.1.3)両端閉管 
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-377-QINU 両端とも閉じた音響管を両端閉管という。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-378-QINU 管内の空気の疎密波の固有振動は
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-379-QINU 両端を節とする定常波の振動である。

UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-380-QINU(3.1.4)開口端補正 
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-381-QINUこれまで開口端の圧力は大気圧と等しい一定値になると仮定し、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-382-QINU疎密波として考えると節、空気の位置の振動と考えると、腹になるとしてきた。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-383-QINUしかし厳密には、開口部から空気を吹き出そうとすると、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-384-QINU外の空気から圧力を受けるので、管の入り口は完全に自由に空気の移動ができるわけではない。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-385-QINUそのため、音を疎密波と考えると節、また空気の位置変動の振動と考えるときには腹は、開口部から少しはみ出す。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-386-QINU そこで、腹の位置を一層正確に知るためには、この量を補正する必要がある。
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-387-QINU 本テキストでは、この問題は扱わない。

(4)固有振動と共鳴・共振

張った弦や気柱の空気の振動などは、それぞれ固有の定常振動数をもつことが分かった。一般に、振動する系は、それぞれ固有の振動数を持つ。
これを系の固有振動という。
振動系の固有振動数と等しい振動数の力をこの系に与えると
この系は激しく振動し始める。この現象を共鳴または共振と呼ぶ。
これについては下記もご覧ください。


(5)ドップラー効果

皆さんも、日ごろ
救急車のサイレンは、近づいているときは高い音に聞こえ、通り過ぎた瞬間に
低い音にかわることに気付いているでしょう。
一般に、音源の音を、音源に対し動いている人が聞くと、 元の音より高い周波数(=振動数)や低い周波数に聞こえる。 これを「ドップラー効果」という。
実用上重要な原理なので、やや詳細に議論しよう。

命題1
音速を UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-388-QINU とする。
音源が周波数 f の音を出しながら、静止している観測者に速度 vUNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-389-QINU で近づくとき、
観測者が聞く音の周波数 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-390-QINU は、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-391-QINU 
である。 ここで、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-392-QINU である。
音源が通り過ぎて遠ざかるようになった瞬間に、観測周波数は急減し、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-393-QINU 

証明 
音源から時刻 t=0 から一秒間だけ音を出すとする。
時刻0での、音源と観測者との距離を UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-394-QINU とすると、
この音が観測される時刻は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-395-QINU
最後(t=1)の音は、音源と観測者の距離が UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-396-QINU のとき発せられるので、
観測される時刻は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-397-QINU 
この間にf回の振動が観測されるので、一秒間あたりの振動数(周波数)は
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-398-QINU

命題2
静止音源が周波数fの音を出している。
観測者が速さ v(UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-399-QINU) で音源に近づいているときに聞くこの音の周波数 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-400-QINU は、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-401-QINU
ここで、 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-402-QINU は、音速である。
観測者が音源を通り過ぎた瞬間に、観測音の周波数は急減し、 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-403-QINU
に変わる。
注を参照のこと。

証明
音源から一秒間(時刻0から、時刻1まで)だけ周波数 f の音を出すとする。
このときの観測者と音源の距離を L とおく。
すると、速さ v で音源に近づく観測者が、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-404-QINU 最初の音を聞く時間 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-405-QINU は、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-406-QINU UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-407-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-408-QINU 最後の音を聞く時間 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-409-QINU は、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-410-QINU UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-411-QINU
これら2式から、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-412-QINU この間に、音は f 回 振動しているので、一秒当たりの振動の回数(周波数、振動数)は、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-413-QINU
同様に考えると、 観測者が音源を通り過ぎた瞬間からは、音源から 速さ v で遠ざかるため、 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-414-QINU
が、得られる。

次に、一つの直線上を、音源と観測者がともに等速度で運動している場合の
ドップラー効果について考察する。
色々なケースを統一的に扱うため、空気が静止して見える一次元の慣性座標系を 用いる。

(注); 音源が動き、観測者が静止している場合(命題1)と結果が異なることに注意が必要である。
その理由を考えると面白い。

音源も、観測者も、ある直線上を等速運動する場合に、そのドップラー効果を調べよう。
命題3
音源は、周波数(振動数) UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-415-QINU の音を出しながら、x軸上を速度 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-416-QINU で等速運動している。
観測者はx軸上を速度 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-417-QINU で等速運動している。
(1)観測者が音源の負側にいる場合
観測者は、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-418-QINU
の周波数の音を聞く。 ここで、 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-419-QINU は音速である。
(2)観測者が音源の正側にいる場合
観測者は、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-420-QINU
の周波数の音を聞く。 ここで、 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-421-QINU は音速である。

証明
(1)の場合(図参照)

ファイル:GENPHY00010402-04.pdf

音源が時刻 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-422-QINU の間だけ、周波数fの音を出すと仮定する。
時刻 t=0 における観測者と音源の距離を L とおく。
すると、観測者が最初の音を聞く時刻 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-423-QINU は
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-424-QINU
を満たす。
時刻t=1のときの、観測者と音源の距離は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-425-QINU なので
観測者が最後の音を聞く時刻 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-426-QINU は、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-427-QINU
を満たす。
これら2式から
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-428-QINU
この間に、観測者の聞く音は、f回振動しているので、
一秒間あたりの振動の回数(周波数あるいは振動数)は
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-429-QINU

(2) 観測者が音源の正側にいる場合
同様にして証明できるので省略。
証明終わり

(注)この命題から、観測者が音源とすれ違うか追い越すと、その瞬間に観測周波数は急変することが分かる。

最後に、超音波による血流速度の測定などに応用される命題を説明する。

命題4
周波数fの音を出している固定音源に、観測者がいて、
速さ v で近づく板からの反射音を観測すると、周波数は
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-430-QINU

証明
記述を簡単にするため、音源は、時刻0から一秒間だけ音を出すとする。
時刻t=0 の、音源と板との距離を L とおくと、
時刻 t における音源と板との距離は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-431-QINU で表せる。
(1)最初(t=0)にだした音の反射音が聞こえる時刻 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-432-QINU
最初の音が出たときの音源と板との距離は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-433-QINU
最初の音が板に届く時刻を UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-434-QINU とする。
この間、音は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-435-QINU だけ進み、 板は 音源方向に UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-436-QINU だけ近づくので、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-437-QINU
故に、 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-438-QINU
この時刻に最初の音の反響音が発生する。
このときの反響音源と観測者の距離は、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-439-QINU なので、
観測者に到達するまでに要する時間は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-440-QINU
故に、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-441-QINU
(2)最後(t=1)にだした音の反射音が聞こえる時刻 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-442-QINU
最後(t=1)の音が出たときの音源と板との距離は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-443-QINU 。 
最後の音が板に届く時刻を UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-444-QINU とする。
この間、音は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-445-QINU だけ進み、 板は 音源方向に UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-446-QINU だけ近づくので、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-447-QINU
故に、 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-448-QINU
この時刻に最初の音の反響音が発生する。
このときの反響音源と観測者の距離は、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-449-QINU
なので、観測者に到達するまでに要する時間は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-450-QINU
故に、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-451-QINU
(3)観測者の聞く反響音の周波数
最初の音の反響音から、最後の音の反響音までの時間は,式(8)、(10)から
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-452-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-453-QINU
この間にf回の振動があるので、周波数は
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-454-QINU

命題4を、観測者が固定音源にいないで、等速直線運動をしている場合に拡張する。
命題5
原点にある静止音源Oが、周波数 f で同位相の音を四方に出している。
この音源を通る x 軸上を,
観測者 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-455-QINU と反射板 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-456-QINU がそれぞれ等速 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-457-QINU、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-458-QINU で運動している。
前者の時刻 t の位置を UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-459-QINU と表わし、
後者の時刻 t 位置を UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-460-QINU  と表す。
但し,考察時間[0,T]中は、 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-461-QINU と仮定し、
音速は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-462-QINU とする。 
このとき、観測者 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-463-QINU が聞く、
反射板 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-464-QINU による反射音の周波数は、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-465-QINU

証明;
記述を簡単にするため、音源は時刻0から一秒間だけ音を出すと仮定する。
この音が反射板で反射し、観測者に聞こえる時間区間
 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-466-QINU を求めよう。
(1) まず、t=0 に音源から出た音が反射して観測者に届く時刻 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-467-QINU を求めよう。
2段階にわけて計算する。
1)、最初(t=0)の音が反射板で反射する時刻 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-468-QINU 。
音は x 軸の正方向にも速度 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-469-QINU で進むので、時刻 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-470-QINU には、
座標 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-471-QINU の点に達する。
時刻 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-472-QINU における反射板の位置は、 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-473-QINU なので、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-474-QINU 
これより、UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-475-QINU
2) 反射音が観測者に届く時刻 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-476-QINU 。 
反射板 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-477-QINU で反射した音は、x軸 の負方向に UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-478-QINU の速さで進む。
他方、観測者は x軸 の正方向に、速さ UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-479-QINU で進むので
両者は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-480-QINU の速さで近づく。
音が反射した瞬間の、観測者と反射板の距離は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-481-QINU
そこで、音が反射後、観測者に届くまでにかかる時間は、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-482-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-483-QINU
故に、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-484-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-485-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-486-QINU
(2) t=1 に音源から出た音が反射して観測者に届く時刻 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-487-QINU を求めよう。
t=0 の時と同様に考えればよいので、概略を示す。
1)t=1 に音源から出た音が反射板に到達する時刻 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-488-QINU ;
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-489-QINU
を満たす。
これを解くと、
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-490-QINU

2))t=1 に音源から出た音が反射して観測者に到達する時刻 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-491-QINU ;
反射した瞬間の観測者と反射板の距離は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-492-QINU
反射後、反射音が観測者まで届くにに要する時間は UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-493-QINU
故に
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-494-QINU
UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-495-QINU
(3) 観測者が聞く反射音の周波数
以上から、観測者は
時間間隔 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-496-QINU の間に
f 回の振動音を聞くことが分かった。
従って、その周波数(振動数) UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-497-QINU は、
 UNIQe4c00ce3d56a3f1-MathJax-498-QINU

最後に;ドップラー効果は色々応用範囲が広い現象である。
興味がある方は、命題4を、音源も等速直線運動している場合に拡張してみてください。

(7)音の干渉

音も波なので、波の重ね合わせの原理が成立つ。
そのため一般の波でおこる干渉も起こる。

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