物理/運動量と力学的エネルギー保存則

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(仕事の量の求め方)
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===仕事とは何か===
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*[[wikipedia_ja:仕事|ウィキペディア(仕事)]]の力学での仕事の項
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力、 $ \vec{F}  $が一定で物体が直線的に ''P'' から ''Q'' に変位するときは前記の説明から力のなした仕事 ''W'' は、内積<tex>\cdot</tex>を用いて、<tex> W=\vec{F}\cdot\vec{PQ}</tex> で表せることが分かる。内積については
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力、 $ \vec{F}  $が一定で物体が直線的に ''P'' から ''Q'' に変位するときは前記の説明から力のなした仕事 ''W'' は、内積 $\cdot $を用いて、 $ W=\vec{F}\cdot\vec{PQ} $ で表せることが分かる。内積については
*[[wikibooks_ja:高等学校数学B ベクトル|ウィキブックス(高等学校数学B ベクトル)]] の1.1.6~ 1.1.8を参照のこと。
*[[wikibooks_ja:高等学校数学B ベクトル|ウィキブックス(高等学校数学B ベクトル)]] の1.1.6~ 1.1.8を参照のこと。
力を受けた時の物体の運動は直線とは限らないが、運動の軌跡を細かく区切って眺めると、線分に近いので、今後物体の変位は、線分をつなぎ合わせたものと考える。すると各線分毎に仕事を計算しそれをたせば、全体の仕事量を求めることができる。
力を受けた時の物体の運動は直線とは限らないが、運動の軌跡を細かく区切って眺めると、線分に近いので、今後物体の変位は、線分をつなぎ合わせたものと考える。すると各線分毎に仕事を計算しそれをたせば、全体の仕事量を求めることができる。

2013年4月16日 (火) 15:27時点における版

物理5章 力学(4) 運動量と力学的エネルギー保存則

質点や質点の集まりの運動を調べるときに有用な各種の保存法則が、運動の法則から導かれます。導出の仕方が理解できると、力学への理解が深まります。下記の記事以外にも、導出法をインターネット検索して調べ、よく考えましょう。

目次

運動量と力積 (momentum or linear momentum and Impulse)

運動の第2法則の両辺を時間に関して積分すると、質点への力積(力を時間で積分したもの)は質点の運動量の変化に等しいことが分かります。

上記の本は一つの質点の運動量の定義と力積と運動量の変化について説明していますが、n個の質点を持つ質点系の運動量は、各質点の運動量の和で定義します。 この場合にも質点系への力積は質点系の運動量の変化に等しいことが、運動の第2法則から導けます。

運動量保存則(conservation of linear momentum )

質点(系)への外力が零ならば、力積は零なので、運動量と力積の関係から、運動量の変化はなく、保存されることが分かります。

運動エネルギー(kinetic energy)

運動エネルギーを学ぶ前にエネルギーと仕事について理解しましょう。

エネルギーとは何か

仕事とは何か

仕事の量の求め方

力、 $ \vec{F} $が一定で物体が直線的に P から Q に変位するときは前記の説明から力のなした仕事 W は、内積 $\cdot $を用いて、 $ W=\vec{F}\cdot\vec{PQ} $ で表せることが分かる。内積については

力を受けた時の物体の運動は直線とは限らないが、運動の軌跡を細かく区切って眺めると、線分に近いので、今後物体の変位は、線分をつなぎ合わせたものと考える。すると各線分毎に仕事を計算しそれをたせば、全体の仕事量を求めることができる。

運動エネルギー

この説明をよんで、何故 \frac{1}{2}mv^2 が運動エネルギーと定義されたのかを考えて理解しましょう。

仕事エネルギー定理(work-energy theorem)

物体に力 F を作用して P 点から Q 点に動かした時の運動エネルギーの変化量 \frac{1}{2}mV(Q)^2 - \frac{1}{2}mV(P)^2は、その物体に加えられた仕事量 W (=FPQ)に等しいことを主張する定理です。運動の第2法則の両辺を、この物体の軌道 PQ にそって積分すると得られます。

保存力と位置エネルギーおよび力学的エネルギー保存則

保存力と位置エネルギーあるいはポテンシャルエネルギー

物体に力  \vec{F} が作用しているとする。この力で物体を P 点から Q 点に動かす時、この力の行う仕事が移動経路に関係なく2点の位置だけで決まる時、この力を保存力(conservative force ) と言い、
この仕事の量を、Q 点を基準とした P 点でのこの物体の位置エネルギー(あるいはポテンシャルエネルギー potential energy)と言う。


保存力は次のように言いかえることができる。物体にかかる力 \vec{F} に逆らって、力 -\vec{F}+\delta を加えて、物体をQ 点から P 点に動かす時、この力  -\vec{F} の行う仕事が移動経路に関係なく2点の位置だけで決まる時、力 \vec{F} を保存力という。ここで力  -\vec{F}は、物体に作用する力 \vec{F}とつり合いをとるための力であり、力  \delta は、力がつりあって静止する物体を、移動経路に沿って、無限にゆっくりと動かすのに必要な、無限に小さい力である。このため \delta のなす仕事は零とみなせる。

を参照のこと。

 保存力の十分条件 

質点Aが質点Bに力 \vec{F_{A}(B)} を及ぼしているとする。
その力の方向が2質点を結ぶ直線方向の引力あるいは斥力で、大きさが2点間の距離で決まると仮定する。この仮定を数式で書こう。質点A,Bの位置ベクトルを \vec{P_{A}}, \vec{P_{B}} と表すと、\vec{F_{A}(B)} =f(||\vec{P_{B}}- \vec{P_{A}} ||) \times (\vec{P_{B}}-\vec{P_{A}})/||\vec{P_{B}}- \vec{P_{A}} ||。 ここでf は任意の関数。
この時、この力\vec{F_{A}(B)} は保存力になる。
証明。質点BをP点から、経路Cに沿って、Q点まで動かすときの仕事が、経路Cに無関係であることを示せばよい。簡単にするため、質点Aと経路Cは同一平面に含まれると仮定し、この平面上で議論する。
経路Cを質点Aを中心とする円弧の一部と質点Aに向かう線分を交互につなぐ線で、つぎのように、近似する。 
ⅰ)P点からQ点まで向かう経路Cの長さをn等分する点をP_0=P,P_1,\ldots,P_n=Q とする。 
ⅱ)質点Aを中心とし、P_0 を通る円と、質点AとP_1  を結ぶ直線の交点をP_{0}' とし、経路CのP_0 P_1 の間を、この円の弧(P_0,P_{0}')と線分[P{0}',P_1 ]で近似する。
ⅲ)経路CのP_1 P_2 の間も同様に、質点Aを中心とする円弧(P_1,P_{1}') と線分[P_{1}',P_2 ]で近似する。 ⅳ)以下同様にして、経路CのP_{n-1} P_{n}=Q の間を、質点Aを中心とする円弧(P_{n-1},P_{n-1}')と線分[P_{n-1}',P_n]で近似する。

等分数nを大きくすると、この近似経路にそって移動する時の力のなす仕事は、経路Cに沿った移動の仕事と殆ど同じになり、\lim_{n \to \infty}のとき一致する。
近似経路のうち質点Aを中心とする円弧を動く時の力のなす仕事は、零となる(力の方向が2質点を結ぶ直線方向の引力あるいは斥力なので、移動経路と常に直交するから)。
次に、近似経路のうち、質点Aを通る直線上を動く経路の仕事を計算しよう。

線分[P_{i-1}',P_i ],i=1,2,,,nという経路を、質点AとP点を結ぶ直線l に含まれる線分に、次のように移し替える。
ⅰ)質点Aを中心とし点P_iを通る円と直線l との交点を P_{i}'',i=1,2,,,n とおき、 P_{0}''=P とおく。 ⅱ)線分[P_{i-1}',P_i ],i=1,2,,,nを直線l 上の線分[P_{i-1}'',P_{i}'' ],i=1,2,,,nでおきかえる。
すると力に関する仮定から、線分[P_{i-1}',P_i ]での移動にさいして力のなす仕事は、線分[P_{i-1}'',P_{i}'' ]での移動のとき力のなす仕事に等しい。
従って任意の経路Cにそって移動するときに力のなす仕事は、常に、線分[P,P_{n}'' ]にそって移動するとき、力のなす仕事に等しい。(証明終わり)

問:質点Aを固定する。この質点が他の質点に及ぼす重力は保存力であることを確かめてください。

 ポテンシャルから力を求める方法 

保存力\vec{F}(未知)の、ある基準点Qから見たポテンシャルエネルギー\phiが既知の時、\vec{F}を、\phiから求めることができる。
Q点を原点とする直交座標系を1つ固定する。この力で、質点を 位置ベクトル\vec{r} の点から、位置ベクトル\vec{r}+(\Delta_{x},0,0) の点まで動かす時(\Delta_{x}は微小にとる。するとこの間の力は一定値\vec{F}(r)で近似できる)、力のする仕事は、ほぼ \vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x}である。すると、\phi(\vec r)+\vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x}は、質点を原点から位置ベクトル\vec{r} の点まで動かし、引き続いて位置ベクトル\vec{r}+(\Delta_{x},0,0) の点まで動かす時の、力のなす仕事になるので、保存力であることから、\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0)) にほぼ等しい。従って\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0))\simeq  \phi(\vec r)+\vec{F}_{x}(\vec{r})\Delta_{x}
故に \lim_{\Delta_{x} \to \0}\frac{\phi(\vec r+(\Delta_{x},0,0))-\phi(\vec r)}{\Delta_{x}}=\vec{F}_{x}(\vec{r});力のx成分。
同様にして
\lim_{\Delta_{y} \to \0}\frac{\phi(\vec r+(0,\Delta_{y},0))-\phi(\vec r)}{\Delta_{y}}=\vec{F}_{y}(\vec{r});力のy成分。
\lim_{\Delta_{z} \to \0}\frac{\phi(\vec r+(0,0,\Delta_{z}))-\phi(\vec r)}{\Delta_{z}}=\vec{F}_{z}(\vec{r});力のz成分。

力学的エネルギーと力学的エネルギー保存則(kinetic energy and conservation of kinetic energy )

力学的エネルギーは

を見てください。
仕事エネルギー定理の仕事量W(=\vec{F}\cdot\vec{PQ} 。 ここで\vec{PQ} は変位ベクトル)をきめる力\vec{F}が 保存力\vec{Fc}と外力\vec{Fo}の和からなるとき、
W=\vec{Fc+Fo}\cdot\vec{PQ}=\vec{Fc}\cdot\vec{PQ} +\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}=Pのポテンシャルエネルギー(U(P)-U(Q))+\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}となる。
一方仕事エネルギー定理から、W=\frac{1}{2}m{V(Q)}^2-\frac{1}{2}m{V(P)}^2なので、この両式から、
\(\frac{1}{2}m{V(Q)}^2+U(Q)\)-\( \frac{1}{2}m{V(P)}^2+U(P)\)=\vec{Fo}\cdot\vec{PQ}が得られる。
もし保存力以外の力\vec{Fo} が零ならば、\frac{1}{2}m{V(Q)}^2+U(Q)=\frac{1}{2}m{V(P)}^2+U(P) (力学エネルギー保存則)が得られる。
もっと知りたい方は次をどうぞ。


エネルギー保存則は物理学のなかで最も基本的な原理です。
熱エネルギーも含めたもっと一般的なエネルギー保存則は、後の章で学びます。

保存則の応用

2質点の衝突


力学に必要な物理量(時間、距離、速度、加速度、質量、力)の単位と単位変換

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